病院薬剤師

当直って大変?病院薬剤師のリアル

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ひなちゃん

病院薬剤師をやってみたいけれど、当直って何をするの?
当直は手当があってよさそうだけど、具体的な仕事内容は何だろう。

薬剤師はる

確かに、病院実習でも経験できない分野だから少し不安ですよね。
当直で働いていた現場についてわかりやすくまとめました。

2次救急の中規模病院で、月2回夜間当直をしていました。
実際に働いていて感じた、メリットやデメリットについても簡単にまとめました。

この記事を読むとわかること
  • 2次救急病院の当直業務の具体的な内容
  • 実際に当直をしてみて感じたリアルな体験談

病院薬剤師の当直の日の勤務時間と人数

勤務時間

病院薬剤師の勤務時間は一般的には9:00~17:30(+残業時間)です。
当直の日は通常業務から始まり、次の日の朝9時までが一般的です。

当直の勤務体制

1人薬剤師が一般的です。
3次救急の病院など、来院する救急患者数が多く、病床数が多い場合などは2人体制の所もあります。

〇次救急とは、救急医療提供体制で定められている、振り分けです。
救急の患者が発生した際、こちらを基準に病院が選ばれます。

3次救急・・・高度な専門的医療を総合的に実施
2次救急・・・地域で発生する救急患者への初期治療と応急処置
       (入院治療を必要とする重症の救急患者)
初期救急・・・歩いて受診できる救急患者に対応

病院薬剤師 当直の日の仕事内容

救急外来の対応

外来対応のみの場合 

例)受診した結果、軽症の怪我と判明した場合
  全身状態が落ち着いている一時的な発熱など

内科当直医の処方(院内処方)に基づき調剤、鑑査し患者へ投薬
処方内容に確認すべきことがあれば必要に応じて疑義照会

緊急入院が必要な場合

《 急性心筋梗塞 》

●モルヒネ

医療用麻薬の為、管理が厳重になっていますが急を要します。
急性心筋梗塞による胸痛に対する処方です。

PHS(薬剤部電話)が鳴ったらすぐに救急外来または手術室へ持って行きます。

●フェンタニル

緊急手術(PCIなど)を実施する場合に使用されます。

術後に抗血小板薬や硝酸薬が処方されます。
アレルギー歴、副作用歴の確認も処方が出る前になるべく早めに行います。

《 脳梗塞 》

●アルテプラーゼ(アクチバシン®

通常、成人には体重 kg あたりアルテプラーゼとして 29 万 ~ 43.5 万国際単位( 0.5 mg / kg ~ 0.75 mg / kg )を静脈内投与する。
総量の 10 %は急速投与( 1 ~ 2 分間 )し、残りを 1 時間で投与します。

急性心筋梗塞の場合、発症後6時間以内の投与が必要です。
      
看護師から脳梗塞の人が来ると連絡が来たら、すぐに準備し、体重を聞いて用量を計算し医師へ報告します。
投与が決定したら、急速投与用のシリンジとその後の分2つのシリンジにそれぞれ必要な量を取ります。

アクチバシン®の薬価
  • アクチバシン®注600万単位・・・1瓶 36,569円
  • アクチバシン®注1200万単位・・・1瓶 77,757円
  • アクチバシン®注2400万単位・・・1瓶 157,831円

上記のように高価な薬の為、実際に使う事がわかってから開封しましょう。
開封後に使用しない事がわかると、薬剤部の赤字になってしまいます。

出血、重篤な肝障害、急性膵炎などアクチバシンが使えない場合があります。
実際に採血結果をみてから、使用の判断が下されるのでそれまで待ちましょう。

ひとり薬剤師だと初めての時はとても焦りました。
救急の看護師さんは仕事ができる人が多いので、心配な時は一緒に確認してもらいましょう。
そして慌てず、でも少し早めに用意しましょう(笑)

《その他の対応》

例)てんかん発作
  交通事故による怪我、虫垂炎など手術が必要な場合

入院前常用薬の確認、アレルギー歴、副作用歴の確認
輸液の処方→すぐ調剤、鑑査し看護師へ渡す

抗菌薬の場合には腎機能、年齢、体重等により用量の確認も早急に求められます。

入院患者の救急対応

輸液の処方

例)術後、循環動態が不安定な患者

血圧や呼吸状態をみて、輸液を投与することで血流量を維持します。

医療用麻薬の点滴ルート抜去

医療用麻薬を疼痛管理に使っている方が腕から点滴針が抜けてしまうことが時々あります。
薬剤部長へ報告、投与開始した時間からロスした麻薬の成分量まで計算するなど管理が厳しいです。

薬剤師はる

入院中の対応で一番大変に感じたことでした💦

入院患者の臨時処方の調剤、鑑査

眠前薬、不穏時薬、術後の疼痛管理に関する薬の臨時処方の調剤を行います。

病院薬剤師の当直体験談

当直を経験してよかったこと

救急医療の現場で使用される薬の知識が増える

半強制的でしたが、救急外来で使う薬の知識が増えました。
知らないと仕事にならないので、当直デビュー前は必死になって勉強しました。

具体的には、まず救急室向けの参考書を一冊購入して読みました。
その上で各病院の対応について先輩に聞いておきました。

多職種との交流

病院に薬剤師が1人になると、必然的に多くの看護師や事務と話す機会が増えます。
質問対応等をする中で、困ったときに相談できる仲間ができました。

落ち着いている当直の日は、CT画像やMRI画像について当直医に画像の味方を教えていただきました。
話す頻度が低く、怖いと思い込んでいた医師と話しやすくなったきっかけでもありました。

当直を始めたばかりの時に困ったこと

医師対応

当直を始めるころには、医師の特徴がわかります。
電話で薬の投与量について相談され、すぐ返答をしなければならないプレッシャーがありました。

他職種からの頻繁な電話対応

電話が四六時中鳴るので、マルチタスクになってしまいました。
未完了の仕事があると困るため、忙しい日はタスクリストを作っていました。

食事

1人薬剤師に、休憩時間はありません。
初めての当直は急患対応で、カップ麺が伸びてしまい食べられる状態では無くなりました。
仕方がないという諦めと、食料がそれしかないという絶望の間で揺れました。

薬剤師はる

少し慣れてきたころ、日中の勤務が忙しかった事もあり
電話に気づかず爆睡してしまったことがあります💦

当直に必要な体力

普通に生活して、基礎体力があれば当直自体は乗り切ることができます。
一方、当直明けの過ごし方が体力により分かれる所です。

当直明けの日にディズニーランドを楽しめる同期もいました。
私は当直明けは爆睡でした。
ホルモンバランスが乱れる時期の当直は本当にしんどかったです。
(当直を変わると、他のシフトへも影響するので、当直日は多少体調が悪くても休めませんでした。)

当直の乗り切り方

  1. 前日はしっかりと寝る
  2. わからないことは、調べて折り返し電話する
  3. 緊急時に相談できるか先輩に相談しておく
  4. 急かされる場合が多いですが、焦らない

病院薬剤師が行う当直のまとめ

当直の業務内容は病院による

当直の忙しさは病院によります。
判断する為に必要な質問は、

『夜間に脳梗塞急性心筋梗塞の患者の受け入れをしていますか?』

です。
受け入れをしていなければ、そこまで当直業務は忙しくないでしょう。

2次救急の当直の仕事

実情
  1. 基本的には電話対応
  2. 緊急入院の脳梗塞、急性心筋梗塞の対応が一番大変
  3. 救急外来+院内臨時処方が重なると、忙しい
経験したからわかること
  1. 普段からコミュニケーションを取れる多職種のメンバーがいると安心
  2. 当直から仲良くなれる多職種の知り合いもいる
  3. 困ったら、慣れるまでは相談が基本
  4. 持ちつ持たれつなので、多職種で協力して乗り切りましょう
  5. 忙しい所なら、カップ麺はおすすめしない

薬剤師の当直は大変ですが、なかなか調剤薬局では経験することができません。
眠れない日もありますが、病院薬剤師の仕事の中でもやりがいの感じる業務の1つです。

薬剤師はる

当直は達成感があります。
当直明けの空は、とても綺麗でした。